元図書館サポーターの鈴木さんの展覧会が12月10日(日)までふじ・紙のアートミュージアムで開催されています。
10月15日(日)にアーティストトークが開催されましたので、その様子をご報告いたします。
第15回紙のアートフェスティバル2023 鈴木優里香展
こちらが展覧会会場です。
第15回紙のアートフェスティバル大賞作品は、「世界へのラブレター」というテーマで10冊の本と展示台・ディスプレイなども含めて空間的に表現した作品です。
鈴木さんのアイディア、そしてアイディアを具現化する技術(細部へのこだわり、技法の幅広さ等)に驚かされます。そして、文章創作・作品制作が一体となった唯一無二のアート作品になっています。
そうこうしているうちに、廊下を挟んで向かいのホールでアーティストトークの時間になりました。
アーティストトークに先立ち、館長から全15回の展覧会の中で鈴木さんが最年少であることが紹介され、アーティストトークが始まりました。
前半は鈴木さんの自己紹介と過去に制作した作品の紹介です。女子美のヒーリング表現領域で学んだことで、人の心に寄り添った作品を作るという意識で日頃の制作に取り組めており、本づくりに出会ったのは2年次の製本の授業だったそうです。
「なんて面白いんだ!」「本ってもっと色々できるんじゃないか!」という気持ちになり、絵本等を制作し始めた他、イラスト、マンガ(ネギさんというキャラクター)、「本棚は語る」シリーズの作品等について紹介がありました。
そして、今回の作品の中から「collecting hearts」「神様」の2作について具体的な説明がありました。
「collecting hearts」のコンセプトは「ハート採集帖、気持ちの記録ノート」。
続いて、後半は展示会場に移動して、鈴木さんから各作品についての解説がありました。
以下はメモの一部。
『Collecting Hearts』
先ほど詳細は説明したが、ディスプレイもラブレターのように拘った。
『メロンソーダ』
メロンソーダを飲んでいる喫茶店内の会話(註:喫茶店内にある定点カメラで見ているような作品だが喫茶店の椅子とテーブルのみで人は登場しない)。人の会話はフォントで人物の違いを表現している(子供なら「こども丸ゴシック」など)。アイスクリームとメロンソーダが混ざっていく様子を紙の色で表現しており、ページを繰るごとに白、アイスクリームにくっついたメロンソーダの淡い緑色、メロンソーダの緑色、、、と断面も含めたページの色の変化で時間経過を表している。本の「花切れ」部分を赤としてチェリーを表現、しおり紐はスプーンをイメージして本自体がメロンソーダにしている。
『猫になりたい』
ネガティブなことを人に言うと、「どうしてそういうこと言うの?」と言われるので、そういう時のための誰にもわからないおまじないの言葉。「猫になりたい」という言葉のみで気持ちの変化を感じさせたい。グラフィックではふわふわを表現。しおり紐は大学にいた猫のしっぽをイメージした。ウレタンスポンジシートを使用して手に持ったときの感じを柔らかくしている。しつこ過ぎないように猫を表現した。
『PF205』
ペーパーフライトという架空の航空会社。移動が好きで、自分に変化はないのに周りの景色が変わることでアイディアが浮かぶ。アナウンスの音の波を仕掛けで表現。
『カビの恋』
まだら模様の和紙を重ねてカビを表現。西洋のマーブリング、東洋の墨流しなど様々な技法を使った。触りたくない本を一度作ってみたいと思った。展示台もカビをイメージ。
『わすれんぼうのリスの話』
ドングリを隠した場所を忘れてしまうリスとフクロウの話。何色かの紙を使って断面は地層を表し、本に穴をあけてドングリに見立てた木材を入れている。1話目はドングリを隠した場所を忘れてしまう話。2話目は、なんでも覚えているフクロウの話。忘れたい過去を抱えてどう生きるかというテーマになっている。
『天地創造』
様々な紙を金継ぎしてジャバラ折りにした作品。真っ白い世界が雷に打たれて色が生まれていく。何かを繋ぎ留めたいということで和紙・洋紙などを金継ぎで1枚に繋げている。箔押しもしている。
『海』
貝から聞こえる海の音。中にあるのは高校時代の作品。外は大学時代の作品。新しい自分が過去の自分を包み込んでいる構造になっている。
『神様』
コンセプトは神様に宛てた手紙。「人生はタマネギのごとし、人は泣きながらその皮をむく」というフランスなどにあることわざが軸になっている。オニオンスキンペーパーを使用。文字が透けて見えることで、とめどなく流れる感情を表現している。文字はパソコンで打った文字をトレースする形で全て手書き。同じ文字でも読み方によってフォントを変えて人間臭さや執着心を表現。
『Melty Dizzy』
まだ起きなくていい時間。幸せな時間。本文は寝ぼけてスマホにメモした言葉。本の形は展示台も含めて溶け出している感じ。文字を反転させていて非現実が当たり前のようにある。夢の中の世界を仕掛け絵本の技法でも表現。
最後に、質問の時間が設けられ、参加者の方から高校時代の作品や好きなアーティストについて質問がありました。
40人以上もの人が参加した熱気あるアーティストトークとなりました。また、アーティストトーク終了後も個別に鈴木さんと参加者の方がお話するなど、皆さん鈴木さんの作品に興味津々のようでした。
2023年10月19日