先生の本棚から

TEACHERS' SELECTION 先生の本棚から


摘読録――My favorite words 第14回

女子美術大学 名誉教授 北澤憲昭

 

ところで、この制度語彙は本書においては広い意味を託されている。法とか政治とか宗教とかいった古典的な制度のみか、技術や生活様式、社会関係、言葉と思想の変遷などに示されるより潜在的な制度も含めるのだ。われわれの研究目的がこうして関連する語彙の生成を過不足なく明らかにしようとするところにある以上、制度語彙とはまさに汲めども尽きぬテーマと言えるだろう。
――エミール・バンヴェニスト/前田耕作監修、鶴岡真弓ほか訳『インド=ヨーロッパ制度語彙集』「序文」より(1969)

 

よく知られているように、1990年代は、日本美術史研究が「制度」論を梃に、みずからを大きく転換させた時代だった。しかし、その起源に、このバンヴェニストの大著があることを知るひとは少ない。上記は、まさにその起源に位置することばである。☆ロラン・バルトは「なぜ私はバンヴェニストが好きか」というエッセイで、この碩学に次のようなオマージュを捧げている。「バンヴェニストは、たえずことばの問題に身を浸しながら、ことばとは無関係だとかことば以前の問題だなどと考えてしまいがちなことすべてを拾いあつめる、というこの決定的なレヴェルでつねにことばをとらえていた。まさにそこに彼の成功があるのだ」(松枝至訳)、と。

 

2017年12月4日
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