展示期間:2024年9月24(火) ~ 12月23日(月)
展示場所:杉並キャンパス 2号館1階ロビー ガラスケース
今回のガラスケース展示では、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティの絵画や彫刻を、迫力ある巨大な書籍の図版でご覧いただきます。(ポスターは図書館サポーターさんが作成してくださいました!)
ルネサンスを代表する巨匠、レオナルドとミケランジェロ。同時代に活躍した2人は、お互いをライバル視していたなどという逸話も残っています。レオナルドは絵画を、ミケランジェロは彫刻を、より優れた芸術と考えていたようで、彼らの間には思想的な対立がありました。
このように、芸術においてどの分野がより優れているのかと論ずることを「パラゴーネ」(Paragone)と呼びます。2人は絵画と彫刻のパラゴーネの中心人物と言えるのかもしれません。
ベネデット・ヴァルキによる調査、レオナルドの手記、ミケランジェロの見解をもとに、パラゴーネについて知り、その上で、当時活躍した巨匠たちの作品(図版)をご覧ください。
( 異分野の芸術を比較して優劣を決めるのはナンセンスじゃない? )
( わたしは、こっち(絵画/彫刻)の方が素晴らしいと思うなあ! )
( 分野じゃなく個々の作品の良さに優劣があるんじゃないかなあ… )
さまざまな意見があると思いますが、いったん意見の良し悪しは置いておいて、芸術を(作品を)比較するということを今一度考えなおしてみる機会になれば幸いです。
ライバル(?)たちの意見
ライバルとして紹介されることもあるレオナルドとミケランジェロ。2人の絵画と彫刻に対する意見とはいったいどのようなものだったのでしょうか?それぞれ見ていきましょう。
レオナルドの意見
レオナルドは、自身の手記において、絵画を彫刻、文学、そして音楽より上位に位置づけ*¹、
画家はあらゆるものを意のままに創造することができ(略)画家には広範囲にわたっての模倣が可能であるが彫刻家はそうではない*²
という旨の論拠を示しており、絵画や画家の優位性を説いています。
ミケランジェロの意見
一方ミケランジェロは、フィレンツェの人文主義者であるベネデット・ヴァルキ(1503-1565)が諸学芸のパラゴーネを取り上げる講演に先立ち行った、美術家へのアンケートに対し、次のように回答しています。
絵画は浮き彫りに近づくほど立派になり、浮き彫りは絵画に近づくほどより悪くなるように思えます。(略)彫刻こそ絵画の灯火であり、両者の間には、太陽と月ほどの相違があるように考えておりました。しかし(略)考えを改めました。(略)絵画も彫刻も、結局は同じものだと申せましょう。(略)各々の画家が、絵画に劣らず彫刻の制作に、同様に彫刻家は彫刻に劣らず絵画の制作に励むべきでしょう。(略)彫刻と絵画は和解すべきであって、多くの議論は放念すればよいのです。*³
当初は彫刻の方が優れていると考えていたようですが、次第に考えを改め、絵画と彫刻の間に優劣はないと結論づけています。
レオナルド VS? ミケランジェロ
対立するように思われがちな2人ですが、こうしてそれぞれの意見を聞いてみると真っ向から対立しているとは言い難いようにも思えます。特にミケランジェロは絵画と彫刻の間に優劣はないという結論に至っており、また、2人はイタリア・フィレンツェのヴェッキオ宮殿にある「500人大広間」の相対する壁に、それぞれ壁画を制作する予定などもあったとされており、共作ではないようですが共演NGというわけでもなさそうです。われわれが思うほどライバルというわけでもないのかもしれませんね。
あなたの意見
ここまで、レオナルドとミケランジェロの意見について説明してきましたが、あなたの意見はどうですか?芸術の分野には優劣があると思いますか?あるならばそれはなぜですか?ないのだとしてもそれは必ずしも良いことと言い切れるでしょうか?
あなたはどう思いますか?
12月23日まで杉並キャンパス2号館1階ロビーガラスケース展示コーナーにて展示しておりますので、この貴重な機会にぜひご覧ください。
〈参考文献〉
『パラゴーネ:諸学芸の位階論争』
ベネデット・ヴァルキ 著
オスカー・ベッチュマン、トリスタン・ヴェディゲン 編
清瀬みさを、小松原郁 訳
中央公論美術出版 2021年12月30日発行
ISBN:978-4-8055-0962-3
*1:p.10-12
*2:p.44
*3:p.251
2024年9月6日