ロラン・バルトは『明るい部屋』において
「《それはかつてあった》」と、
撮影された瞬間に過去へ運び去られる写真の本質を説いています。
けれど、母への憧憬に侵されたこの一冊は、ある種の写真を、
「《それはかつてあった》)と真実(《これだ!》)との稀有な融合」の
場所へ、超越させる。
「狂気の境に肖像を運び去る」。
「あまりにも遠い時間の吹き抜ける瞬間に落ちこんで」いる写真を、
奈良原一高は「静止した時間」と呼びました。
それは彼の写真集のタイトルともなり、
ある予感とともに透徹されている。
「死」の領土に、写真はある。
しかし同時に、過去や未来さえ超越し、
啓示される芸術としての写真もまた、あるということ。
この度、杉並図書館で所蔵する写真集の中から、
とりわけ重要な幾冊かを展示します。
普段は書庫1に隠れている写真集を是非ご覧ください。
タイトルは、ヴァルター・ベンヤミン 「写真小史」から名を借りて。
すべての本が、お貸出し可能です。
2021年11月11日