近年、さまざまな分野でリバイバルが起きており、デザインにおいてもそうした動きが散見されます。
「リバイバル」とは、過去の流行が再評価され再びブームが起こることを指しますが、ただ流行を同じようになぞるのではなく、そこには現代の流行や発展した技術、変化してきた文化なども取り入れられ、当時とは違った面も見えてくるのではないでしょうか。
今回は、その中でも特徴的な「メンフィス」と「ヴェイパーウェーヴ」を特集します。
広告やウェブサイト、映像など、様々な媒体で目にはしていても、当時のこととなるとインターネットではなかなか調べられないこともあるかと思います。
当時の資料や関連書籍でそのルーツを知り、現代での扱われ方を再考。そして、ご自身の制作に取り入れてみてはいかがですか?
メンフィス(Memphis)
メンフィスとは、1980年イタリア、有名デザイナーのエットレ・ソットサス (Ettore Sottsass) を中心に、建築家やデザイナーなど、世界中の若手クリエイターで構成されたデザイナー集団です。
1981年にメンフィス社を設立し、家具やオブジェのデザインを中心としたメンフィス・プロジェクトを始動。解散の1988年までの毎年、コレクションを発表しました。
使われる材質は、プラスチック・大理石・木材・ガラス・金属など、従来のデザインの常識を覆すほど驚きに満ちた組み合わせで、遊び心を感じさせるビビッドな配色と相まって、世界的なブームを巻き起こしました。
近年、複数の形状や質感の素材が組み合わされたメンフィスの家具を、分解して再構成したようなデザインがよく見られます。コラージュのようでありながら、パターンのようにリズムを作ることもできるため、無造作で雑多な印象や、ポップで心地よい感覚など、表現の幅広さも魅力的です。
展示資料 ※一部紹介
『Memphis:research, experiences, results, failures
_and successes of new design』
ヴェイパーウェーヴ(Vaporwave)
ヴェイパーウェーヴとは、2010年頃にリリースされた楽曲に影響されて生まれた音楽のジャンルを指します。1980-90年代の楽曲がサンプリングされた懐古趣味的な存在で、Youtubeをはじめとする動画共有サイトで親しまれ広がりを見せました。
代表的なアルバムとして
『Floral Shoppe』(Macintosh Plus)、
『Far Side Virtual』(James Ferraro)、
『New Dreams Ltd.』(New Dreams Ltd.)、
『Chuck Person’s Eccojams vol. 1』
(Chuck Person[Daniel Lopatin a.k.a. Oneohtrix Point Never])
などが知られています。
ヴェイパーウェーヴの楽曲に添えられる映像や、アルバムのジャケットデザインには独特の様式が見られます。低品質なフォントやCG、低解像度の画像、ブラウン管やVHSを思わせる色収差とグリッチ。
一見ノイズとも思えるこれらの要素は1980-90年代の技術を再現したもので、ノスタルジーを作為的に演出しながら、資本主義や消費社会など、インターネット黎明期の当時未来へ向けられていたまなざしへの批評的態度を感じさせます。
青や紫、ピンクといったネオンカラーによる特徴的な配色は、「ロー・ファイ(Lo-Fi)」、「チル(Chill)」、「フューチャー・ファンク(Future Funk)」などと呼ばれる音楽ジャンルのアートワークにも使用されているため、近年のウェブを主体とする音楽シーンで非常に印象深いカラーリングと言えるのではないでしょうか。
展示資料 ※一部紹介
『[特集]Vaporwave(ユリイカ 2019.12 no.752 vol.51-21)』
『[特集]hyperpop(ユリイカ 2022.04 no.788 vol.54-5)』
『Alternative design X 2000(アイデア別冊)』
『デジタルメディアと日本のグラフィックデザイン:その過去と未来』
『[特集]コンピュータ時代のデザイン
_(デザインの現場 1993.06 no.62)』
図書・雑誌あわせて30冊。
2022年10月1日(土) から 10月31日(月) まで、
杉並図書館カウンター横にて展示しております。
ぜひご利用ください。
2022年10月1日