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広報誌No.85
新年度に向けて

学長 松島道也
 美術大学が美術に関する技術や理論を教え、美術の専門家を養成するところであるのは云うまでもない。しかし、我々が目差すのはただたんに腕のよい美術の職人ではなく、同時に教養の深い人間を育てることである。では教養とは何であろうか。私はそれを「なるべくいろいろな角度と広い視野から自己を見つめ、人間の生き方を考える力」だと思っている。


 この美術の技術と教養とは決して無関係にあるのではない。ちょうど木の根が深く広く根ざしていればいるほど、その木が高く立派に育ち得るように、すぐれた技術も深い教養に支えられてこそ、その作品は美しさと魅力を増すはずである。皆さんがさまざまな分野の議義に出席して広い知識を身につけること、クラブやその他の課外活動に参加して多くの友人をつくったり、身体を鍛えたりすること、旅に出て見聞を広めたり、古美術品に接すること、これらはいずれも芸術家の基礎を作ることに通じているのである。

(『女子美』 No.85 1986昭和61年4月9日発行より転載)

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