2017年度第一回の展示では当館所蔵の貴重書をご紹介します。
いずれも原書を忠実に再現したファクシミリ版です。豪華絢爛、きらびやかな書物に目を奪われます。
この機会にじっくりとご覧ください。
■『ボルソ・デステの聖書 La Bibbia di Borso d’Este』
成立:1461年
言語:ラテン語
原書:エステンセ図書館所蔵(イタリア)
当館所蔵資料:ファクシミリ版(限定750セット)
イタリア・ルネサンス期における「彩色写本の最高傑作」といわれ る。
iconograpy(キリスト教図像学)の宝庫で研究家の原資 料として一級品の価値。
北イタリア、フェッラーラの君主であり愛書家のエステ・ボルソが 自らのために制作させた彩色写本。当時の貴族の間では自分専用の 豪華な聖書を作ることが好まれていた。1455年より、 タッデーオ・カルベッリ、フランコ・ディ・ルッシ、 ジョルジュダレマーニなど当時最高の画家と契約し、写本を完成さ せた。ルネサンス期に制作された採飾写本を代表するとともに、当 時の宮廷文化の精華である。2巻合わせて六百葉を超える本聖書 のうち、豪華な装飾の施されていない紙葉は一葉もないと言ってよ い。
各ページに、Impreseとよばれる個人の紋章が見られる。彩 色写本の緻密さ、独自性、デザイン性、挿絵や彩飾の量、質など写 本の魅力がつまった一冊。
■『リンディスファーン福音書 The Lindisfarne Gospels.』
成立:7世紀末-8世紀初頭
言語:ラテン語
形態:ヴェラム紙(羊や子牛の皮を薄くのばしたもの)
原書:大英博物館所蔵
制作: Faksimile Verlag(スイス)
当館所蔵資料:ファクシミリ版(1852年にヴィクトリア朝時代 の金細工師が再現した際の装丁の再復刻 世界限定290冊)
『ダロウの書』『ケルズの書』とともに“三大彩色写本”に数えら れる。英国プレ・カロリンガ朝期を代表するラテン語聖書の重要写 本。またウィリアム・モリスをはじめ、近代の私家本の制作者たち に大きな影響を与えたとされ、デザイン史、 美術史的にも大変意義のある書物。
英国の北東部のリンディスファーン島。700年頃司教イードフリ ースによって修道院を復興した偉人、聖カスバートの墓所に捧げる ために制作されたのが本書である。製本は、司教エセルワルド、 装丁は隠者ビルフリースが担当。
本書の見どころは、装飾のモチーフに、「螺旋紋」「動物組紐紋」 「福音書記者像」 があげられ、これらにはケルト、ゲルマン美術、ビザンティン世界 の相互の影響が認められる。また文章の行間に10世紀末頃の古英 語で逐語訳が書き込まれており、 これは現存する最古の英語訳といわれている。
福音書記者(マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネ)像、カーペットペー ジ、装飾頭文字、螺旋インターレース(ひも・リボンを織り込み左 右対称の図柄にした模様)紋模様、鈎十字文様など随所に人や動物 などの意匠化された表現が見られる。
彩色は天然顔料で45色が使用されている。濃青色はラピスラズリ で、アフガニスタン北東部のバダフシャン産の石を用いている。彩 色写本の緻密さ、独自性、デザイン、超豪華な装丁、表紙に埋め込 まれた本物の宝石、巻頭部の装飾された十六葉の「対観表」( 美術史上最古実例)など見どころが多い。
2017年4月6日