ラインズ : 線の文化史
No.009
  • 著 者:ティム・インゴールド著;工藤晋訳
  • 出版社:左右社
  • 出版年:2014

「線」は、しばしば、人間社会の進歩を示すのに用いられてきた。直線的に未来へと向かう進歩史観の表象だ。これに対して、インゴールドは「散歩にでかける」(パウル・クレー)線を重視する。目的への到達よりも、むしろ、線が引かれてゆく過程を大切にするのである。著者にいわせると、点というのは、線の到達するところではない。それは線が滞留する場であり、渦巻きのような形象で示される。こうして点は、そこからあらためて線がスタートする中継点、あるいは、あらたな線が生み出される起源となる。つまり、ひとつの場となる。ドローイングにかかわる訓練や研究にたずさわるひとびとにとって必読の書というべきだろう。

女子美術大学 名誉教授
北澤憲昭
ボッコちゃん
No.008
  • 著 者:星新一
  • 出版社: 新潮社
  • 出版年:1971

ショートショートの神様、星新一による短編小説集の決定版。読書の入門書として触れた人も多いのではないだろうか。
時代性や難解さを廃したフラットな文体で、ビター風味の大人のSF寓話がテンポ良く展開していく。一作品は数ページほどと、一駅間で読み切れる分量にまとまっているとっつきやすさも魅力の一つだ。質と量を兼ね備えた粒揃いぶりは、小説のオードブルとも言い表せる。

相模原図書館スタッフ
O.S

絵画材料の小宇宙 : 実験と顕微鏡で再発見
No.007
  • 著 者:橋本弘安
  • 出版社:生活の友社
  • 出版年:2006

美術の窓という雑誌に連載したものをまとめた拙著です。光学顕微鏡を中心に電子顕微鏡・形状測定顕微鏡・粒度分析・蛍光X線分析・サイズ排除クロマトグラフィの分析なども使い「もの」としての絵具を考え、岩絵具・絵具・基底材などの比較研究を行いながら、岩絵具のつくり方、本当の色、天然顔料の応用利用などを紹介しています。画家にとっての「暮らしの手帖」のような思いから絵具メーカーなどに協力してもらうことなく独自の視点で考察していった本です。たまに古書で手に入れることは出来たりもしますが写しであれば日本画研究室でデータを取れるようにしています。

女子美術大学 名誉教授
橋本 弘安
ネコに金星
No.006
  • 著 者:岩合光昭
  • 出版社:日本出版社
  • 出版年:2008

『やさしい人がいるところには、やさしいネコがいる。人がせかせかしていれば、ネコもせかせか。47都道府県すべてを回った岩合光昭さんはそう語る。』(内容紹介より)
岩合光昭さんが撮影する写真の猫たちは、みんな、路地で、街で、港で、砂浜でいきいきと逞しく生きています。
人間と共存しているけれども、自然体で、媚びていないその姿は本当に美しく、とても凛々しいのです。
猫たちの日常を覗いているような気分を味わえること必至!
“ネコの道は3次元”を地でゆく表紙からして、もうメロメロなのです。

杉並図書館スタッフ
S.K

芸術崇拝の思想:政教分離とヨーロッパの新しい神
No.005
  • 著 者:松宮秀治
  • 出版社:白水社
  • 出版年:2008

藝術には、やはり、どこかエラそうな風情があります。本来、西欧近代主義の所産にすぎぬ藝術概念、つまり、特殊地域的時代的なるもののはずのそれが、一体なぜ、かくも普遍化され、かような高みにまで押し上げられ、ついに神格化されるに至ったか。本書において著者は、近代国民国家が国民統合を図るべく、従来の中世的宗教の代替として、あらたに白羽の矢を立てたものこそが藝術であり、その、いわば藝術宗教というべき様態の「神殿」が美術館であったことを明らにします。今日において、藝術とは何か?を問う者の必読の書です。

大学院美術研究科デザイン専攻 非常勤講師 (音楽文化学)
石井 拓洋
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