倒錯の偶像 : 世紀末幻想としての女性悪
No.033
  • 著 者:ブラム・ダイクストラ著 ; 富士川義之 [ほか] 共訳
  • 出版社:パピルス
  • 出版年:1994

西洋近代美術史といえばレアリスムから抽象美術へという革新運動の展開を思い浮かべるが、当時の人々に広く浸透していたのは、保守的なアカデミスムの流れを汲むサロン派の作品であり、物語性と写実性を重視する画風であった。著者は豊富な図版を駆使して、これらサロン派系の絵画が18世紀以降の西欧資本主義社会が求める女性像の形成にいかに寄与してきたのかを分析。そこには女性嫌悪と差別意識が含まれており、白人男性優位の支配概念がやがてジェノサイドを誘発するという結論に至る。近代美術史の図と地が入れ替わったような衝撃を覚える一冊。

大学院 非常勤講師
藤原 えりみ
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