怠惰への讃歌
No.021
  • 著 者:バートランド・ラッセル著 ; 堀秀彦, 柿村峻訳
  • 出版社:平凡社
  • 出版年:2009

過労死が問題になる一方で、この20年くらいのあいだに日本の労働人口の半数近くがコンピューターに取って替わられるという予測が不安を呼んでいる。しかし、これらは正と負の数字のように互いに打消し合う関係にあるとみることができる。コンピューターが職を奪うのではなく、過重労働を救ってくれると考えることも可能であるからだ。ラッセルは、本書で、産業革命の進展によって労働は4時間で充分になったと述べているが、コンピューターがもたらすであろう新たな事態は、さらに労働時間の短縮を可能とするのにちがいない。ただし、この可能性を実現するには、ひとびとに時短の恩恵を平等に配分する社会的仕組みが必要となる。ラッセルは、それを「気の利いた組織sensible organisation」と呼んでいる。では、それが実現したとして、そこに生じる余暇を、いったいどう過ごせばよいのか。余暇をもてあまさない人間を育成すること、それが教育の役割だとラッセルはいっている。まったく、そのとおりだと思う。

芸術表象専攻 教授
北澤 憲昭
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