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TEACHERS' SELECTION 先生の本棚から


摘読録――My favorite words 第2回

芸術表象専攻/芸術文化専攻 教授 北澤憲昭

 

新しいものは常に謀叛である。

――徳冨蘆花/中野好夫校訂「謀叛論(草稿)」(1911)

 

第一高等学校で行った大逆事件をめぐる講演のなかのことば。徳富蘆花は、この一節に続けて、「我らは生きねばならぬ。生きるために謀叛しなければならぬ」と述べている。蘆花にとって大逆事件は、たんなる政治的事件ではなかった。「謀叛」とは、彼にとって「生」の在り方そのものだったからである。☆ サルトルは、かつて実存主義の“教義”を「実存は本質に先立つ」と要約してみせたが、蘆花の主張するところは、これと近い。実存と本質のイタチゴッコにおいて、常に実存が本質を出し抜くのだとすれば、実存としての生は本質に対する絶えざる「謀叛」とみなしうるはずなのだ。☆ 政治的ポーズにすぎない安楽な「謀反」は、いつの世においてもありふれている。しかし、「謀反」であるような生を生きる者は決して多くはない。

 

2017年1月17日
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